スカルパ三角とは
この部位には、大腿動脈や大腿神経など生命維持に関わる構造物が集まっており、救急医療やスポーツ現場において触診可能な“生きた解剖”の場として認識されています。また、視診・触診によって評価がしやすいため、学生教育や臨床実習の段階から重点的に学ばれる領域でもあります。

解剖学的な構成
スカルパ三角は、はっきりとした解剖学的な境界で区切られるため、触診や臨床評価の際にランドマークとして非常に役立ちます。
- 上縁(基底):鼠径靱帯(そけいじんたい)
鼠径靱帯は腸骨前上棘から恥骨結節まで張る厚い靱帯で、腹部と下肢を区切る役割を果たしています。臨床的には鼠径ヘルニアの診断部位としても知られ、圧痛や膨隆の有無を確認する重要なポイントになります。さらに、この靱帯の下を通る血管・神経は「鼠径管」や「大腿輪」と関連し、解剖学・臨床学の両面で非常に重要な領域となります。
- 外側縁:縫工筋(ほうこうきん:Sartorius)
縫工筋は人体で最も長い筋肉で、腸骨前上棘から脛骨内側にまで斜めに走行します。股関節の屈曲・外転・外旋、膝関節の屈曲を担う多機能な筋であり、スカルパ三角の外側を明確に区切る目印になります。臨床では、スポーツ障害や過使用により緊張・痛みを訴えることがあり、触診で位置を確認することで外側縁を簡単に特定できます。
- 内側縁:長内転筋(ちょうないてんきん:Adductor longus)
長内転筋は内転筋群のひとつで、股関節の安定化と内転動作を支えています。サッカーや陸上競技などでの内転筋損傷(グロインペイン症候群)の原因筋として臨床現場でもよく話題になります。触診では恥骨から大腿骨内側に走行する線維を容易に確認でき、スカルパ三角の内側境界としての目印になります。
- 底(floor):腸腰筋(腸骨筋+大腰筋)、恥骨筋など
スカルパ三角の床を形成する筋群は、股関節の主要な屈筋群です。腸腰筋は「姿勢保持筋」とも呼ばれ、体幹の安定性と歩行動作に大きな役割を持ちます。恥骨筋も同様に股関節屈曲と内転に関与し、鼠径部痛や腰痛の原因となることもあります。これらの筋を触診・評価できることは、股関節周囲の臨床判断に直結します。
- 天井(roof):皮膚・浅筋膜・広筋膜
スカルパ三角の表層は皮膚・浅筋膜・広筋膜によって覆われています。外傷時にはこの層に出血や腫脹が起こり、視診で異常を発見できる場合が多いです。また、リンパ管や表在血管も浅筋膜内を走行しているため、臨床での視診・触診による観察は欠かせません。

通過する構造物(内容)
スカルパ三角を通過する構造物は、臨床的に非常に重要です。外側から内側に並ぶ順番を「NAVeL」で覚えることが推奨されています。
- N:Femoral nerve(大腿神経)
大腿神経は腰神経叢から分かれ、大腿四頭筋や縫工筋を支配する主要な運動神経です。臨床的には、大腿前面のしびれや筋力低下の原因を調べる際に重要な評価対象です。大腿神経の障害は膝伸展力の低下を引き起こし、歩行能力に直結するため早期に見極める必要があります。
- A:Femoral artery(大腿動脈)
大腿動脈は外腸骨動脈から連続する太い動脈で、体表から拍動を容易に触れることができます。救急現場では止血や脈拍確認のためのランドマークとして用いられ、整形外科やスポーツ現場では血流障害の有無を評価するポイントになります。また、医療処置ではカテーテル挿入の経路として利用されることもあり、臨床上の重要性は非常に高いです。
- V:Femoral vein(大腿静脈)
大腿静脈は大腿動脈のやや内側を走行し、下肢の血液を心臓へ還流させます。深部静脈血栓症(DVT)が発生するリスク部位でもあり、むくみや疼痛の評価で触診されます。特に長時間の安静や術後には、血栓形成の有無を注意深く観察する必要があります。
- L:Lymphatics(リンパ節・リンパ管)
スカルパ三角の内側には浅鼠径リンパ節が多数存在し、下肢からのリンパ液が集まります。感染症や悪性腫瘍がある場合、このリンパ節が腫脹して触知されることが多く、診断の大きな手がかりとなります。臨床では鼠径部のリンパ節腫脹を確認することで、全身性疾患の早期発見につながることもあります。

スカルパ三角と臨床との関係
スカルパ三角は、解剖学の知識がそのまま臨床現場で役立つ数少ない部位です。
- 大腿動脈拍動の確認部位
救急処置やスポーツ現場での外傷対応時には、頸動脈と並んで脈拍確認に利用される代表的な部位です。また、止血点として用いられることもあり、生命維持に関わる緊急時対応に直結します。
- 鼠径部の圧痛・腫脹の評価
鼠径部に圧痛やしこりがある場合、鼠径ヘルニアやリンパ節腫脹、感染症などを疑います。触診による所見は診断の第一歩となり、必要に応じて画像検査へとつなげられます。
- 経絡治療・鍼灸での適応部位
東洋医学の観点からは、スカルパ三角は肝経・脾経の流注部と重なります。そのため、婦人科系の不調、下肢の冷え、血流不良に対して鍼灸施術が行われることがあります。現代医学と東洋医学の双方の視点から重要性を持つ部位です。
- リンパ浮腫や下肢むくみの観察ポイント
スカルパ三角はリンパ液の通過点であり、むくみや浮腫の観察・治療効果の判定にも使われます。特に術後や慢性疾患の患者では、鼠径部リンパ節の状態を確認することがケアの一環として不可欠です。
このようにスカルパ三角は、救急・整形外科・鍼灸・リハビリテーションのすべての分野に関わる“臨床の交差点”といえるのです。

◆ 臨床での注意点・禁忌事項
強い圧迫や不用意な刺激は血管損傷や神経障害を引き起こす危険があり、特に鍼灸では刺鍼の方向や深さを誤ると重大事故につながります。
そのため、施術時には解剖学的理解をもとに安全な範囲を守ることが求められます。触診の際には、股関節を軽度屈曲・外旋させて筋や血管の緊張を緩和する姿勢を取るのが基本とされ、安全かつ正確な評価を行うために不可欠です。
◆ スカルパ三角の理解を“現場で活かせる強み”に変えたい方へ
柔道整復師にとっては鼠径部損傷や股関節周囲の外傷評価に直結し、鍼灸師にとっては婦人科疾患や血流不良への施術対象として重要です。また、スポーツ現場では股関節前面痛や大腿部筋群の緊張評価に活用され、リハビリテーションでも有効な観察ポイントとなります。まさに「解剖学を学ぶだけ」ではなく「臨床で実際に使える」知識の象徴であり、施術者として信頼を得るための必須スキルといえるでしょう。
スカルパ三角のような「解剖学 × 臨床」の知識を、ただ知識として持つだけでなく、実際の現場で活用できることが施術者としての強みになります。私たちは、柔道整復師・鍼灸師としてキャリアを積む皆さんに向けて、実践的な学びと経験を得られる職場をご紹介しています。
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