国家資格を持ち、医療や介護など幅広い分野で活躍できる柔道整復師は、安定性と将来性があるとして人気の職種です。
柔道整復師になるには、高校卒業後、文部科学省指定の大学の柔道整復師関連学部や厚生労働省指定の養成施設を卒業したのち、柔道整復師国家試験に合格することが必要です。養成施設の修業年数は最低3年。養成施設では解剖学や生物学、運動学などの基礎科目に加え、柔道整復やリハビリテーション学などの臨床について幅広く学びます。
基礎的な医学の知識、解剖学や生理学といった知識だけではなく、柔道整復術をはじめとする技術もしっかり身につけた上で、合格率7割を切る国家試験を受けて合格してやっと、柔道整復師として活躍できるのです。
それほどの苦労や努力が必要になるにもかかわらず、柔道整復師の数は年々増え続けています。厚生労働省によると、平成30年末時点の就業柔道整復師は73,017人で、前回調査(平成28年末)に比べ4,897人(7.2%)増加したそうです。
このように、需要も供給も増え続けている状況であるため、“業界全体が不況で生き残るのが難しくなる”ということはありません。柔道整復師人口が増えているということはそれだけ良材が生まれ、業界全体のレベルアップに繋がることが期待されます。腕のある柔道整復師が増え、スキル基準が上がるという前向きな面もありますが、逆にいうと現状維持を望む柔道整復師の方々には、少々風向きがきつい状況になるかもしれません。
治療院の数も年々増えています
柔道整復師の数が増加するのに伴い、接骨院や整骨院といった治療院の数もだんだんと増えています。厚生労働省によると、平成30年末時点の柔道整復施術所数は50,077か所で、前回比で2,053か所(4.3%)増加したそうです。特に、東京や大阪といった大都市には、6,000件以上の整骨院が開院中です。
また、同じく厚生労働省の統計によると、2016年時点でマッサージ院、鍼灸院、整骨院、整体院などの治療院は全国に計13万6460カ所存在。全国に広がるコンビニエンスストアの店舗数(2018年11月で5万5695店舗、株式会社サニタス調べ)の約2倍にも上ると言われています。
接骨院などの治療院が増えることは、市場が大きく成長しているということなので基本的にはいい話であるといえます。しかし、独立開業をしたばかりの方や、逆に新しい整骨院が近くに出来てしまった老舗の治療院などは、ライバルの多出によって厳しい状況を強いられているということもあるかもしれません。
接骨院の増加が激化していて柔道整復師は生き残りが難しい?
このように、治療院と柔道整復師の数は増加の一途を辿っていますが、患者の数も同じように増加し続けているとは限りません。治療院の数だけが増えていけば、当然患者の奪い合いが起こります。例えば、半径5キロ以内に1つしかない治療院があればその地域の方達が集中することが予想されますが、同じ範囲に10施設あれば当然ながら患者は分散してしまい、売上は落ちてしまいます。
そのため、今後独立開業を視野に入れている人は、周囲の同業種に関する情報は徹底的に調べてから場所を決めるようにしてください。治療院を選ぶ際に“家からの近さ”はかなり重要な要素となるので、逆にいえばそれまで一軒もなかった場所に治療院ができれば、地域の方から重宝されることが期待できます。
生き残りが難しいのは療養費が減少しているせい?
高い需要がありながら、一部で「柔道整復師として生き残るのが難しい」と言われているのには、“接骨院・整体院の療養費の減少”が関係していると考えられます。
整骨院や整体院の増加に伴い、健康保険の不正・不当請求も増加したため、監視の目が厳しくなったことが理由です。整骨院は以前まで、患者から「療養費支給申請書」に署名してもらい、これを健康保険組合に提出すれば、1ヶ月分の療養費をまとめて申請することができました。
これが、整骨院・整体院の安定した経営を支えていた一面もあるのです。しかし、監視の目が厳しくなったことにより、近年療養費は減少しました。健康保険の経営も厳しいことから、健康保険に頼った経営は今後立ちゆかなくなるといわれています。
柔道整復師としてのスキルがなければ生き残りは難しい?
柔道整復師の数が年々増えているのに伴い、若く優秀な柔道整復師も増えてきています。「このままスキルを現状維持して、仕事をこなしていこう」などと考えていた柔道整復師は、市場に取り残される可能性もあります。
インセンティブ制であれば、向上心のある若い柔道整復師に患者がたくさんつき、自分には全然つかないという可能性もあり、結果的に年収が大きく下がることも想像できます。
意欲がある若い世代の参入は、元々いた柔道整復師からすると面白くないところがもしかするとあるかもしれませんが、治療院内に新しい風を取り入れてくれるありがたい存在であるとも言えるでしょう。
柔道整復師として欠かせない大切なスキルって?
施術スキルを磨くことももちろん大切ですが、コミュニケーション能力を磨くことも非常に重要になります。柔道整復術では、症状が完治するまで継続的に通院を求めるケースがほとんどです。お悩みを聞き出して、個々の症状に対して施術をしていくため、患者様一人一人との密なコミュニケーションは必要不可欠です。
また、たとえ柔道整復師としての技術が高かったとしても、それを伝える術がなければ再来院してもらえることはなく、経営にマイナスなインパクトを与えてしまうことがあります。特に独立開業している柔道整復師であれば、患者様がいて初めて経営が成り立つために、再来院をしていただくため、丁寧にコミュニケーションを取る事も重要になります。
そして、お客様と接する距離が近い分、クレームが届きやすいところも難点です。患者様が柔道整復師に対して不快感や頼りなさを感じないように、最低限の礼儀や接客能力を身につけておく必要があります。特に治療院のエリアによっては、経営者や社長が多い高所得者が集まるところもあり、接遇部分で高いレベルを求める場合もあるため、想定外のクレームやご指摘をいただくケースもあります。
柔道整復師にとって、コミュニケーション能力は技術と同じくらい大切だといっても過言ではありません。鍛えておくと役に立つだけでなく、自分を守ることにもなる大切なスキルです。
柔道整復師として生き残るために必要なことは?
ここまで、柔道整復師として生き残るための方法やポイントについてお話ししてきました。まとめると、柔道整復師として生き残るための道は2つあります。
まず1つは、スキルを向上させることです。施術のスキルにコミュニケーションスキルなど、自身に足りていないところや、伸ばして強みにしたいところを強化して、自分だからこそ歩める道を探しましょう。
そしてもう1つは、スキルアップができたり魅力的な経営をしている治療院に転職することです。もし今働いている接骨院でこの先の未来が見えないのだとしたら、思い切って転職して、この業界で生き残るための武器を身につけるのもいいでしょう。
また、“柔道整復師として生き残る”というところに重点を置くのであれば、何も接骨院にこだわる必要はありません。例えば、高齢化が日に日に進んでいる日本で、今需要の高まっているのが“介護福祉施設で働く柔道整復師”です。介護福祉施設とは、デイサービスや特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどのことを指します。
柔道整復師がデイサービスで勤務する場合は、「機能訓練指導員」として働くことになります。この機能訓練指導員は、デイサービスや特別養護老人ホームなどの施設に必ず一人以上配置することが義務付けられています。高齢化に伴い、そういった施設が年々増加している今、需要が高まっている職種なのです。
そのほかにもジムのトレーナーや病院の整形外科など、柔道整復師が活躍できる働き先は多岐に渡ります。
柔道整復師として生き残るために転職を考えるのであれば、ぜひWELLジョブに登録を! あなたの大切にしたいポイントをしっかりとヒアリングした上で転職先を提案したり、生き残るために身につけるべきスキルをアドバイスしたりします。この業界で生き残るのはもちろん、いつまでも重宝される柔道整復師になるべく、一緒にがんばっていきましょう!