【解説】接骨院にかかるときに知ってほしい健康保険のあれこれ

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健康保険の対象となる場合はどんな時ですか?

近年ますますその数を増やし、街の人々の身近な存在となっている接骨院・整体院。慢性的な不調をお持ちで、かかりつけの治療院がある方もいれば、ギックリ腰や捻挫といった突然のハプニングで治療院を探される方もいらっしゃるかと思います。そういった中であなたが治療院を探す時は、何を基準に選んでいますか? ネットの口コミや家からの近さはもちろん、多くの方は費用面、つまり“健康保険の対象になるかどうか”が気になるところかと思います。

整骨院・接骨院で柔道整復師による施術を受けた場合、治療費は健康保険の対象となる場合と、ならない場合があります。治療院は病院ではないため、健康保険の使える範囲が限られています。柔道整復師が健康保険扱いで施術ができるものは、柔道整復師法や厚生労働省通知などで細かく定められているのです。

では、どういった時に健康保険の対象になるのでしょう? 健康保険の適用となるのは「急性」「外傷性」のケガのみで、以下の5つに限られます。

<健康保険の対象になる場合>

  • 骨折(不全骨折を含む)
  • 脱臼
  • 骨折・不全骨折・脱臼については医師の同意が必要です(応急処置を除く)。
  • 捻挫
  • 打撲
  • 挫傷(肉離れ等)

※施術が3ヵ月を超える場合は、療養費支給申請書に施術(治療)の継続が必要であることの理由書の添付が必要です。

接骨院・整骨院は保険医療機関ではなく、施術を行う柔道整復師も医師ではないため、上記以外で保険証を使用した場合は後から全額負担になり、費用を請求される場合もありますので注意しましょう。

例えば打撲や骨折などで突然治療院へ行かなければならなくなった場合、「どこの治療院がいいんだろう?」「値段は高いんだろうか…」と不安になったり、パニックになったりすることがあるかもしれませんが、こういった場合は健康保険の対象となるのでご安心ください。早急に適切な措置をすることが重要なので、安静にしつつ、お近くの治療院へ向かうようにしましょう。

健康保険の対象とならない場合はどんな時ですか?

逆に、健康保険の対象外となるのは、下記のような症状で受療した場合です。この場合は健康保険(保険証)が使えず、全額負担となります。

<健康保険の対象にならない場合>

  • 日常生活からくる疲れ、肩こり、腰痛など
  • 加齢からの痛み(五十肩・腰痛)
  • スポーツなどによる肉体疲労・筋肉痛改善のためのマッサージや温冷あんま治療
  • 過去の交通事故等による頚部・腰部など疼痛
  • 脳疾患後遺症等の慢性病のリハビリやリウマチ・関節炎等の神経性疼痛
  • 医療機関(病院・医院等)で医師の治療を受けながら、 同一疾病について同時に接骨院・整骨院で治療を受けること
  • 医師の同意がない骨折・不全骨折・脱臼

つらい肩こりを感じた時や、身体の疲労を感じる時に整体院や整骨院に駆け込みたくなりますが、こういった場合は健康保険の対象外となります。柔道整復師へのかかり方を正しく理解していなければトラブルの要因にもなりかねないので、適切な受療をするようにしましょう。

また治療院側も、前もって金銭面は確実にお伝えしておくなどして、すれ違いによるトラブルが起こらないように十分注意しておく必要があります。柔道整復師は独立開業する方も多いので、もし自分の城を持った場合は健康保険の制度をしっかりと理解し、従業員にも患者様にも共通認識としてシェアしておくと安心です。

接骨院/整体院で治療を受ける際の注意事項は?

柔道整復師にかかる場合は、いくつか注意事項があります。以下で詳しく見ていきましょう。

①負傷の原因を正しく伝えましょう

どういった原因で負傷したのかをきちんと話すようにしましょう。外傷性の負傷でない場合や、負傷原因が労働災害に該当する場合、または通勤途上に負った負傷には、健康保健は適応されません。また、交通事故などによる第三者行為に該当する場合は、協会けんぽ(全国健康保険協会)に連絡をしましょう。

②「療養費支給申請書」の内容をしっかりと確認し、 必ず自分で記入・捺印をしましょう

『療養費支給申請書』は、受療者が柔道整復師に委任をし、本人に代わって治療費を「協会けんぽ」に請求し支払いを受けるために必要な書類です。委任欄に記入する場合は、傷病名・日数・金額をしっかりと確認しましょう。そして何より、ミスをなくすためにも自分で気をつけながら記入・捺印をすることが大切です。白紙の用紙にサインをしたり、印鑑を渡したりしてしまうのは、間違いにつながる恐れがありますので注意してください。

③必ず領収証をもらいましょう

治療院を使用したことを証明する“領収証”は必ずもらっておきましょう。万が一金額などに相違があれば、「協会けんぽ」まで連絡をしてください。また領収証は、医療費控除を受ける際にも必要になりますので大事に保管しておいてください。さらに、一部負担金の内容を知りたいときには、施術項目ごとに記載された明細書を求めることもできます。柔道整復師は、正当な理由がない限り、明細書の発行を拒むことはできません(明細書は実費となる場合もありますので、ご注意ください)。

④治療が長引くようであれば、もう一度医師の診断を受けましょう

長期間治療を受けても一向に変化がなく、回復に向かわない場合は、内科的要因も考えられます。そうなれば保険対象になるので、一度医師の診断を受けましょう。

⑤「家族に付き添ったついでに」などの“ついで”受診は支給対象外

例えば、打撲を理由に整骨院に訪れたとします。打撲であれば健康保険の対象となりますが、「ついでに凝っている肩のマッサージも…」ということになれば、そこからは健康保険外の料金となります。顔なじみのお店だとつい甘えてお願いしたくなるかもしれませんが、お互いに気持ちよく利用し続けるためにも、定められたルール以上のお願いをするのは御法度です。

⑥保険医療機関(病院・医院等)での治療との重複受診はできません

同一負傷について、同時期に医療機関の治療と柔道整復師の施術を重複並行的に受けた場合、原則として柔道整復師の施術料は全額自己負担になります。

このような様々な注意点を知らなければ、ひょっとすると必要以上に支払ったり、損をしたりしてしまうことがあるかもしれません。お得に賢く施術を受けるためにも、整骨院・接骨院での注意点はきちんと把握しておくといいでしょう。

不正請求問題とは?

そもそも、なぜこういったルールが定められているのかというと、医療の不正請求の問題があるからだと言われています。不正請求とは、施術した回数や部位を偽造することで、必要以上に多くの療養費をもらう行為のことを指します。

整骨院・接骨院において、不正請求はどのように起きるのでしょうか? 柔道整復術は、一般的な病院での診察と同じように、窓口で保険証を見せれば健康保険の自己負担分だけを支払えばよいと認められています。この特例制度のことを「受領委任払い制度」といいます。

受領委任払い制度において、整骨院は患者様に負担してもらわなかった分(基本は医療費の7割)を会社の健康保険組合や全国健康保険協会といった保険者へ請求します。不正請求は、主に整骨院・接骨院から保険者への請求で発生します。

まず一つ目に、施術箇所の偽造です。例えば肩の痛みで来院された患者様に対し、からだけではなく、腰や手足の施術も一緒に行うことをいいます。

本来の目的とは違う部位も診ることで、実際に必要だった分よりも多く施術費を請求するやり方です。また実際には施術を行っていないのに、書面上だけ施術を行ったことにして架空の請求を行うケースも現実に起こっているのです。

二つ目に、施術箇所を転々と変える方法です。こうしたやり方は“部位転がし”と呼ばれます。部位転がしとは、「主な来院目的とは違うところを怪我したことにして、通院を引き延ばす行為」のことをいいます。

患者に長期間に通ってもらうことで、治療院側は安定した収入を得ることができます。しかし、正しい施術を続ければ症状は改善していき、来院の頻度はだんだんと減っていきます。そこで、例えば足が痛い患者に対して「あと少しで治るのでもうちょっとだけ通ってほしい。カルテには腰を痛めたと書いておきます」などと伝え、施術を継続させる施術院もあるのです。これがいわゆる“部位転がし”です。

施術箇所の偽造も部位転がしも、一度の施術に対して必要以上に多い額を請求するための不正です。こうした不正請求を疑われないためにも、紙や電子でカルテをきちんと保管しておくことが重要です。

柔道整復師の離職率は高いと言われていますが、その一因に“不正請求”があるといいます。期待に胸を膨らませて入った治療院が不正請求を行っていてショックを受け、また自分も犯罪に加担しているのではないかと怖くなって辞めてしまう方も少なくありません。特にブラックな治療院は、社員に不正に加担するようにと強要するケースもあるようです。こういった場合は間違いなくパワハラに当たるので、もし心当たりのある方は信頼できる人に相談してみてくださいね。

柔道整復師の転職ならWELLジョブへ

ここまで接骨院・整体院の不正請求について記してきましたが、もちろんこういった治療院が全てではありません。しかし、今このような問題に直面していて、ストレスや心配事を抱えているという方には、転職を強くお勧めします。

犯罪に加担することになるからという理由ももちろんありますが、本来柔道整復師とは患者様の身体の不調を見極め、的確にケアをする職業です。そんな柔道整復師がストレスを抱えていると患者様に伝わってしまいますし、柔道整復師は身体が資本です。ご自身の体調やメンタルが健康でないと、他人を癒やすことなど到底叶いません。

健康的に楽しく働くために転職を考えられている場合は、ぜひWELLジョブに登録を! 転職先の経営面周りの情報などをしっかりと把握しながら、あなたに合う治療院や企業を探します。一緒に素敵な柔道整復師ライフを目指しましょう!

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