多くの会社には、作業手順や社内ルールやお客様への対応等を記した「マニュアル」が存在し、そこで働く人たちは当然マニュアルに沿った行動をする必要があります。マニュアルがある事によって、サービスクオリティーを平準化出来たり、作業工数を減らし効率よく働く事が出来るようになるからです。
柔道整復師にはマニュアルが必要ですか?
柔道整復師のマニュアルはサービスや手技のレベルを平準化させるために重要であり、接客していて困ったときなどに自分を助けてくれる心強い存在でもあります。一方、自分自身の柔道整復師としての理念があり、自分ならではなの手技に自信がある場合は、マニュアルで定められたことをこなすのではなく、それよりも患者様と向き合い、自分の判断で手技を施したいという意見もあります。
マニュアルが必要か否かは、治療院の理念によるところが大きいため、一概にどちらが良いとは言えません。また柔道整復師は、治療院や病院、介護福祉施設、パーソナルトレーニングをするジムなど様々な働き口があり、働き方によってもマニュアルの有無や必要性は変わってきます。
例えばパーソナルトレーナーなどは特にマニュアルはなく、一人一人の状態や希望に沿ったオーダーメイドの処置がベストだと考えられていますし、それを求めて来るお客様がいることも事実です。
いずれにしても、豊富な知識や技術は、お客様に安心してもらうためには重要になります。今回は、治療院で働く「柔道整復師」にフォーカスを当てて、マニュアルの有無によるそれぞれのメリット・デメリットについて話していきます。是非転職する際の参考にしてください。
マニュアルが必要な柔道整復師はどのような人ですか?
どんな仕事でも、個々人の経験や理解度、スキルの違いによって差が出るものです。そんなとき、マニュアルがあると業務の「明確化」と「平準化」がしやすくなります。そのため、仕事を始めたばかりでまだ慣れていない人や、転職してきて業務内容を十分に把握しきれていない人には、マニュアルは大きな助けになります。
また考え方のタイプとして、何事も効率的に進めたい人や、基本の筋道があった上でそこから応用することが得意な人もいるかと思います。そういった方達にとっては、マニュアルがある治療院の方が自分に合った働き方ができるのではないでしょうか。
一方で、一人一人の患者様の体を触って症状を把握した上で、自分の手技で治療をしたい方もいるでしょう。確かな知識と経験をもとに「この処置がいい!」と自信を持って判断できるのであれば、マニュアルのない施術の方がお客様の満足度は高いかもしれません。
マニュアルがあることのメリットとデメリットは何ですか?
ここからは、マニュアルがあることによるメリットとデメリットを詳しく紹介してきます。まずメリットとしては、大きく下記の4つが挙げられます
1.クオリティの均一化
業務内容をマニュアル化することで、サービス・施術の品質の均一化をはかれます。つまりお客様がいつ何時来院されても、一定の満足感は必ず保証できるということです。マニュアルがあると業務の流れが明確になり、ミスやトラブルを減らせますし、発生した場合にも適切な対応をすることができます。
また基本的な業務知識だけでなく、一人一人の気づきやトラブルシューティング法をマニュアルに追加していくことで、全員が最新の情報を共有し合うことができます。情報格差がなくなり、どのメンバーが担当しても一定以上の品質で商品やサービスを提供できることは大きなメリットだといえます。
特に大きな法人であれば、そのネームバリューを信頼して来院される方も少なくありません。いつどこで誰に対応してもらっても、同じサービスを受ける事ができるのは患者にとっては大きなメリットになる為に、規模が大きいほどにマニュアルの重要度は高くなるとも言えます。
2.人材育成がはやく、楽になる
マニュアルがあれば、早期に人材を育成することができます。業務の全体像を初日から明確化した状態で渡せるので、素早く把握することができるからです。新卒や転職して入社したての時は、マニュアルがあればそれだけでも安心できる材料となります。
また、忙しい時期などに先輩に質問しづらいことがあっても、マニュアルがあれば困ったときに自力で解決したり、それを元に考えたりできます。人材育成が早いスピードでできると、先輩社員はさらなる品質改善や顧客満足向上のために時間を使うことができます。
3.属人化することの回避
マニュアルがあることにより、業務が属人化することを避けることができます。誰か一人がある業務を得意であれば、どうしてもその人に頼ってしまうようになります。頼られすぎて仕事を休めない状況になったり、退職したら穴を埋めなれないようになるリスクもあるため、業務をマニュアル化して明確にしておくことは重要になります。
特に治療院の経営で考えれば俗人化してしまう事はメリットもありますが、退職時に誰も対応できなくなってしまうデメリットも大きい為に、サービスクオリティーを保つことができなくなります。会社経営で考えてもマニュアルというのはとても重要な役割となります。
4.社会人としての基本スキルが身につく
またマニュアルと一口に言っても、何も施術の話だけではありません。会社によっては、挨拶や身だしなみ、態度など、社会人として大切なことが記載されているところもあります。例えば名刺の渡し方、外部の関連企業の方との打ち合わせの時、正しい言葉使い、社会人としての対応もマニュアルがある事で安心する方も少なくありません。治療院のエリアによっては接遇にこだわる患者様が多いエリアもあり、接遇マナーが理由でクレームになる事も、二度と来院頂けない事もあります。
社会人一年目で右も左も分からない状態であれば、こういったマニュアルはトラブルを回避するためにも重要ですよね。特に柔道整復師はお客様と直接しっかりと関わり合う職業であるため、第一印象や関係性は非常に大切になります。そういった意味でも、社会人としての心得的なマニュアルがあると安心感があります。
このように業務の質が安定していく一方で、やり方によってはデメリットも。ここからは、大きく3つのデメリットを挙げていきます。
5.マニュアル通りにしか動けなくなる
マニュアルがあることに慣れ切ってしまうと、その中にある通りの動きしかできなくなってしまいます。マニュアルにあることは完璧にできるけれど、記載のないことに対して考えを巡らせることがなくなり、イレギュラーなことが起こった場合に全く対処できないという可能性もあります。自分で考えることがなくなったり、融通が利かなくなってしまったりすることは大きなデメリットといえます。
またマニュアルから逸脱したことを、患者様の為だと思って対応したらまさかのペナルティーがあった!なんてお話を聞いたこともあるので、マニュアルという基準がある事は良い事ですが、マニュアルに記載がない事に関しての対応方法は、上司の承認を貰うなどと答えを出すのに時間がかかる事もあります。
このようなことが起きるのを防ぐために、マニュアルを作成する際は“記載以外のことが起こりうる可能性があること”も明記しておき、また全員がマニュアルづくりに参加しやすい風土を作っておくことが大切になります。
6.社員のモチベーションが下がってしまう
マニュアルがあると安心感がある反面、“決められたことをやればいい”と思い、当事者意識の薄れてしまう人が出てくる可能性があります。何かアイデアを思いついたとしても、“でもマニュアルで決められているし…”と発信しないこともあるかもしれません。「マニュアルは絶対的なものではなく、新しい良い方法はどんどん発信してほしい」などという雰囲気を作っておくことが、社員のモチベーションを保つために重要になるでしょう。
特に患者様に関しては一人一人身長も体重も筋肉量も異なる為にマニュアルにする事が難しいケースも少なくありません。そんな時にそれでも「マニュアル通りに!」と言われてしまえば、考える事を辞めてしまいたくなりますよね。
7.マニュアル作成に時間がかかる
柔道整復師は、通常業務の施術の他に、カルテ管理などの事務作業をする必要があります。そんな中でマニュアルを作る時間を捻出するのは骨が折れますし、マニュアルを作成しようと思えば考えるべきことは多岐に渡り、かなりの時間がかかります。
業務内容を整理し、フォーマットを統一して作成し、各所にチェックしてもらうため、マニュアルづくりに膨大な時間がかかるのは当然です。そんなデメリットをなくすためには、まずトラブルシューティング的なところだけマニュアルを作成したり、あまり時間をかけずにマニュアルを作成できるITツールを活用したりするなど、工夫して進めるとよいでしょう。
マニュアルがないことのメリットとデメリットは何ですか?
マニュアルがないことによるメリットももちろんあります。ちなみに、「マニュアルなし」は無知のままでいいという意味ではなく、あくまでサービスレベルの平準化が目的とされているものです。マニュアルがないからこそ、一人一人が高い学習意欲が必要となります。それを踏まえた上で、メリットを詳しくご紹介していきます。
1.一人一人にあった施術ができる
マニュアルがないことによる一番大きなメリットは、やはり自分でお客様の症状を見極め、施術できることだといえます。マニュアルがあるとどうしてもそれに沿う必要がありますが、自分がベストだと思う手技を施すことができれば、その分お客様の満足度も上がるでしょう。マニュアル通りに施術しなければならないことで、今もどかしい思いをしている方は、「この処置がいい!」と自分で判断できる治療院の方が伸び伸びと働くことができるかもしれません。
2.社員のモチベーションを高く保てる
自分の思い通りに施術できるのに加え、マニュアルがない分、症状についてしっかり話し合ったり、生活習慣を把握して家でできるストレッチを提案したりするなど、自由で親密なコミュニケーションを取りやすくなります。そのように関係性を築き上げ、自分の施術により患者様が回復していく様子は、何よりもモチベーションに繋がるのではないでしょうか。
また反対に、マニュアルがないことによるデメリットもあります。
1.新人教育がしづらい
マニュアルがないということは、教科書のような存在がないということなので、予習をすることが難しくなります。またマニュアルがあれば、教わった仕事を後から見返すこともできますが、なければ教わっている最中に自分でメモを取るしかありません。そうするとメモを取ることに夢中になり、大事なことを聞き逃したり、見逃したりしてしまう可能性もあります。また、分からないことがあるたびに先輩に聞くのは気を使いますし、実際先輩方の時間を奪ってしまうことになります。新人教育をする必要があるのであれば、マニュアルがある方が格段に効率はいいでしょう。
2.属人化しやすくなる
マニュアルがないと自分で判断してできることが増える分、その人にしか出来なかったり、分からなかったりすることも増えていってしまいます。患者様からも「○○さんが良い!!」とか「○○さんが今日いないなら帰ります!」なんて言われてしまうケースもあります。こうなると経営者としては頭の痛い事ですよね。
マニュアルがない治療院の求人を探すには?
マニュアルがあると、ある一定以上のクオリティを提供できる反面、マニュアル通りにしか動けず窮屈に感じる可能性があります。逆にマニュアルがないと、一人一人の患者様にあった施術を自分で考えて施すことができますが、新人教育がしづらくなるというデメリットがあります。
どちらものメリット、デメリットをしっかりと把握し、自分にはどちらの方が合いそうか判断しましょう。「マニュアルあり」の治療院の求人は多い一方、「マニュアルなし」の求人は少ない印象があるかと思います。自分で見つけるのは難しいため、WELLジョブに登録して、情報を探してみてくださいね。自分が納得できる理念を持つ会社を、ぜひ見つけてください!